ぺんぎんの音楽日記

クラシック音楽について、絵画や鳥たち、日々の生活について自由に書いていこうと思います。

オペラ5、プッチーニ「マノン・レスコー」~♪

今日のオペラのチケットは、実はこの春に、買っておいたものです。
マノン・レスコーというあまり聞く機会のないオペラであった事、5階席でも1番前ならなんとかよく見えるんじゃないかと思った事、何でもいいからオペラが見たいと思ったのが理由です。

上野の秋深い色づいた葉の森が見られると思ったのですが、、、今日の公演は夕方6時半から、、着いた頃にはすでに真っ暗。森の中を抜けようと言う気にもなりません。今まで昼間しか出かけなかったので気がつかなかった。。甘かった、、
街頭に照らされた色づいた葉がちょっと見えるくらいかしら、、、

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ホールの脇のほうに、NHKの大きな車が止まっていました。
お、、後でテレビでも放映されるのかな?と思うと、ちょっと嬉しくなりました。
一粒で2度美味しい想いができるかなと。。。

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もぎりのところで並んで開場を少し待ちました。程なく開場が告げられ、中へ入っていきました、、
が、その時、私の2人前の老夫婦、奥さんが先に進んでチケットをもぎってもらって、後の旦那さん、そのまま行こうとして止められて「お客様チケットを、、」と係りの人に言われ、、
前の奥さんの背中をトントンと叩く、聞こえないが「おい、チケット、、」と言ったのでしょうね。
奥さん、険しい顔して目を吊り上げて「さっき、渡して財布の中にいれたじゃない!」と怒ったように言う、、、、あら大変、修羅場だわ、、
旦那さんは、かばんを開けてチケットを探す、、当然、入場の列がストップ、、
奥さんはさらに罵声を浴びせ、、、オペラを楽しみに来てるのに、やめてくれ~~~


演目はプッチーニ作曲オペラ「マノン・レスコー」、演奏はキエフ・オペラ~ウクライナ国立歌劇場オペラ~です。東欧のオペラがこぞって日本で公演していますが、オペラ初心者の私も、割安なこの手のオペラをすでに見ました。ブルガリアのソフィアのオペラですね、、このあと、ワルシャワも行きます。
ウィーンの森バーデンは東欧ではないですが、割安感がありました。
割安感があるのに、中身はしっかりしていて、見ごたえがあると思いました。

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ところが、今回の「マノン」、、中に入ってみてびっくり、、
正面の席以外は、1階もすべてガラガラなのです。。
正面も4階は2人くらいしか見えません。ひゃ~、なんでしょうね、人気ないのね。。
1階の真ん中はしっかり人が入っています、そして、正面席の次に席が埋まってるのが、今回私の座った5階席(と言っても半分埋ってないくらいですが)。。。何と言うことでしょう、いい席か安い席か、どっちかのメリットがないと中途半端はいらないよと言うことなのでしょうかね、、
丁度、文化会館のHPの座席の位置が今日の席とほぼ同じでした。画像を拝借。。
左側が切れてしまって見えますが、もう少し左側見えます、そしてもう少し近い感じかな。。
オケピットが丸見え、でも、やはり、遠いので1列めなので前に乗り出してみました。
それにしても、この、タコの吸盤みたいなサイドの壁のオブジェ、、いつ見ても好きになれない。。どっちかっていうと、気持悪い。。。
この形って、なにか、音響的に効果があるのでしょうか?

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さてオペラですが、前奏曲、聞いたことない曲ですが、まあ、プッチーニらしい曲です。
幕が開き、宿屋の風景が現れます。
主役のデ・グリューのテノール、なかなかいい声です、よく抜けています。
ややあって、マノンの登場、マノンは大変な美女と言う設定ですが、帽子をかぶっていて、5階から見下ろしてるので顔が見えません。見えないと余計にみたいですね、、
マノンの声はとてもきれいでした。柔らかいソプラノで、高いところは柔らかくよく抜けていて、低いところは太くて豊かな声がでます。
帽子を脱いだところでやっと顔が見えました。なんか化粧が濃いです。。。美女なのかどうかよくわかりません。
ところで、なんだか兵士の格好をした合唱隊、小柄な人が多いな~足も太くて短く見えるけど。。。
と思ってオペラグラスでよ~く見ると、あ、、この兵士たちの半分は(それ以上かもしれない)女性だ、体型が紛れもなく女性です。見たとこ,男性ばっかりで女性が少ない、、合唱は男性の方が女性よりやや少なめでバランスするのですから、登場人物に男性が多いとこういうことになるのでしょうか。
足が短く見えるのは、実際に背が低いのと、やはり上から見てるからなのでしょうね。
やっぱり適度な高さで見るのがよいみたい。。


男声ソリストのデ・グリュー役のテノール歌手、マノンと絡んでデュエットするところは、とても切なく歌います、所々、男性の色気のようなものさえ感じます。
マノンの兄のレスコー(バリトン)、それに金持ちの初老の大臣ジェロンデ(バス)もなかなかいいです。女性ソロはマノンのほかに1度だけメゾ・ソプラノが出てきますが(これはあんまりよいとは思いませんでした、歌い始めがなんとなく音程がよくわからなかったし、声も好きじゃなかったです)、ほとんどマノンだけ、と言う感じですから、マノンが下手だととっても詰まんないオペラですね、「椿姫」もそんなとこありますが、「椿姫」よりもっとです。
が、私がこのオペラを通して素敵と感じたのは、デ・グリューの歌ですね。

1幕目のアリア「見たこともない美人!」マノンとのデゥエット「愛は悲しみを打ち砕く」、2幕目のアリア「ああ、マノン、お前の愚かさが」、3幕目の捨て身になって歌うアリア「狂気のこのボクを見てくれ」、マノンとの最後のデュエット「貴方の腕の中で最期の時を」など、聞かせどころが多いです。
マノンのアリアも勿論素敵ですけれどね。美しいけれど、ちょっと軽薄で贅沢をつい求めてしまう愚かしさのあるマノンを広い心で受け止めて、許し、助け、ともに破滅の道を辿るデ・グリューの切ない気持がひしひしと伝わってくるのです。「トゥーランドット」のリューと同じで、役どころで同情ポイントが高いのかもしれませんが。。。
このオペラは、デ・グリューの純愛物語、といったところでしょうか。


テレビやDVDでも、このオペラはみた事がなく、今回舞台ではじめてみました。
プッチーニの初期の作品で、3大オペラ(なん大なんちゃらっていう根拠と尺度っていうのはイマイチわかりませんが)「ラ・ボエーム」「トスカ」「蝶々夫人」の前に作られたものだそうです。最近は、この他に「トゥーランドット」も大変人気がありますね。
でも、「マノン・レスコー」は、上の4つと比べると日本ではかなり上演される機会は少ないと思います。知らない人も多いでしょうね。
私にとっては「マノン・レスコー」は、ちょっと興味がありました。
若かりし頃、原作であるアべ(僧侶に付ける尊称、アベ・シェイエスとか、、つまり、この作者はお坊さんなのです)・プレヴォー(1697 - 1763)の小説をざ~っと読んだことがあるのです。詳細は覚えていませんが、、
これをどうやって、オペラにしたのかなと言うのは、とても興味のあるところでした。
オペラと言う舞台の限られた時間と場面で、どう表現してるのか、とか。。

あらすじは、
騎士デ・グリューは美少女マノンと出会い駆け落ちするが、彼女を愛した男たちは嫉妬や彼女の欲望から破滅していき、デ・グリューも巻き込まれて数々の罪を犯す。彼女はアメリカへ追放処分となり、デ・グリューも彼女に付き添って行くが、アメリカでも彼女をめぐる事件は起き、ついにマノンは寂しい荒野で彼の腕に抱かれて死ぬ。(Wikipediaより)
なのですが、この遍歴振りをどういう風にオペラであらわすのだろうか、って思いません?
結局、途中は端折られています。

まず1幕は2人の出会いから駆け落ちまでの場面、
2幕はデ・グリューとの貧乏な生活に嫌気がさしたマノンが金持ちの初老の男ジェロンドの妾となって贅沢三昧で暮らしてる彼女の部屋での生活とデ・グリューとの再会、
3幕はデ・グリューが罪人となってアメリカに赴くマノンを助けようとして失敗、懇願してアメリカへの同行を許可してもらう場面と、マノンがその後アメリカでもいろいろ問題を起こし逃亡の身となって荒野にて果てる場面、

オペラの舞台は、2人が愛を語り合ったり、再会して愛を確かめ合ったり、愛しあいながらも死別してしまうという、愛のシーンばかりなのですね。
貧乏生活したり、罪を犯したり、裏切ったりと言う場面はみな端折られています。小説ではもっとこの辺りが赤裸々で、マノンの身持ちの悪さ、浪費癖、などが描かれてたように思います。オペラでは、そういう風には描いてなくて、ただ美しくて軽薄なだけ、のように見えますね。
場面が幕ごとに空間時間ともとんでしまうので、細切れっぽさが否めません。

それがゆえに、なおさら、デ・グリューの純愛物語、という観がするのですね。
デ・グリューは貴族で、マノンは平民です。これは、作者プレヴォーの時代には大変重要な事です。
貴公子デ・グリューをここまで破滅させる女マノン、そういう女性をファム・ファタール(男たちを破滅させる女)と呼ぶのだそうですが、これは、ファム・ファタールを描いた文学作品としては最初のもの(Wikipedia)なのだそうです。
ずっとあとになって、やはりオペラ化されたメリメの「カルメン」やデュマの「椿姫」など書かれています。この手の話は、オペラになりやすいのでしょうか、、ね。
騎士デ・グリューのファム・ファタールへの純愛物語、開場時の件の老夫婦はどんな気持でご覧になったでしょ。余計なお世話だけど。



面白かったと言えば、面白かったですけど、最後の場面はやはりちょっと物足りないかな。。
砂漠か荒野かしらないけど、最後の場面では、砂っぽい模様の布が敷きつめてあるだけでしたし、
背景も何もなくて、もっと背景の演出して欲しいかな、と思いました。
音楽としては、オケも充実してましたし、でもね、後半はなんだかな~音がやたら大きかったり、まとまってなかった時もあったような。。
そうそう、文化会館、やっぱり、音は上に上がって行っちゃうみたいですね。
この前、1階でしたけど、音がとんで来ない気がしました、あのヴィ~チェロ~~、、のところで。
今回は、管楽器がやたら大きかったところ以外は、歌の方もオケのほうも5階までちゃんと聞こえましたから。上の方の音響は悪くないですね。
周りは、ガラガラでしたから、一人で、5階の手すりから身を乗り出してオペラグラスで見ていたぺんぎんでしたが、よくぞ落ちなかった、、というより、よくぞオペラグラスを落とさなかった、と後で思いました。