ぺんぎんの音楽日記

クラシック音楽について、絵画や鳥たち、日々の生活について自由に書いていこうと思います。

ジョン・エヴァレット・ミレイ展~♪

土曜日のお仕事の後、ちょっと疲れていましたが、頑張って渋谷へ行きました。

眠らない街は、夜の7時頃なんて真昼間と同じ、真っ暗な交差点に人が群がり、まっすぐに歩けない、赤信号なのに人が車道へはみ出している。車ははみ出した人を避けて走る。
青になったら人の波が横断歩道へ押し寄せる。もたもたうねうね、なかなか向こう岸に着かない。
信号が赤に変わっても人の波はなかなか引かない、痺れを切らした車は人の波に限りなく近付いていく。。よくまあ、事故がおこらないものだ、、

先週の佐藤立樹さんのピアノコンサートのあとに行くつもりでしたが、(そう、はしごでも違う種類の芸術ですから大丈夫のはずです^^)でも、疲れていましたので、無理はしませんでした。
それで水曜日の午前が空いていたので、この日に出かけようと思いました。が、ちょっと別の予定が入りました。最終日が近付いて、、日曜の朝に行くよりは土曜の夕方(は、遅くまで開いています)の方がいいかな~まだ込み具合がましかなと思って、思い切って行ったのですが。
BUNKAMURAの地下にエスカレーターで降りたとたん、その考えは甘いということに気づきました。
長蛇の列です。。「トイレはありません、並ぶ前に必ず行ってください」、とミュージアムの職員の声。

一瞬迷いました。交差点の人の波にもまれた時もちょっと迷いました。とっても疲れを感じて、こんな状態で絵を見たくないなと、思ったのですが。渋谷へもう一度出てくる方がたいへんかな、、と思いなおし列の後ろにつきました。

並んでる間に、ポスターをパチリ。

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近年たいへん有名な、ジョン・エヴァレット・ミレイのオフィーリア。みんなこれがお目当てです。
というか、これ以外の絵をしらない。
中は混んでいましたが、入場制限をしていましたので、空いてるところから、あちこちと見て歩きました。

イギリスヴィクトリア朝19世紀後半の画家のはずですが、少し前の絵のような気がしました。19世紀後半というとどうしてもバルビゾン派とか印象派の絵を思い出します。あ、でも、ロセッティに似てるかもですね。ラファエル前派というのですね、こういうスタイルを。丹精に描かれた作品が多く、大きさはいろいろ、肖像や物語の絵はかなり大きなものもありました。色調は明るく、色彩も豊かです。

肖像画、聖書や歴史から題材をとった絵、物語の絵、そして風景画がありました。
肖像画や物語の絵はヴェラスケスを彷彿とさせるもの、少女や女性の表情豊かなもの、特に目に輝きとかのあるものが印象的でした。
風景画は、夏に見たコローの森の絵のようなのが素敵と思いました。風景といっても森や植物の絵が多く、町や建物はほとんどありませんでした。
人を愛し、森や植物を好んだ画家だったのでしょうか。


まずは、「オフィーリア」です。
シェイクスピアの「ハムレット」に出てくるあまりにも有名な悲劇の少女オフィーリア。
この絵はまず背景から描かれたのだそうです。周りにはあらゆる野の花や気が描いてあります。ひとつひとつの植物はオフィーリアの人や運命を象徴しています。植物を正確に描写することで現実性を高め、日常の中にこの場面を表そうとしたのだそうです。劇的な悲劇のヒロインとしてではなく。
描かれた植物の花言葉は、それぞれ
スミレ・・・純潔、誠実、若い死      ケシ・・・死
ヒナギク・・・無邪気           キンポウゲ・・・子どもらしさ
ナデシコ・・・悲しみ           パンジー・・・物思い、叶わぬ愛、
バラ・・・愛               ヤナギ・・・見捨てられた愛、愛の悲しみ  など

植物に秘められたオフィーリアへの思い、そしてその運命。
子どもらしい、無邪気というのがありますが、反面、その顔の表情の半開きの眼は子どもとは思えず、半開きの口は性的なもの、官能でしょうか、を表すものらしいです。
つまり、この絵には性と死が同時に存在しているのですね。

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さて、次です。
マリアナ」と題されたこの絵、ぱっと見、「あら、お疲れなのね」と、思ってしまいました。
どう見ても、腰が凝ってしまってぐっと体をそらして腰を伸ばしているように見えます。
テニスンの詩に基づいて描かれたこの絵の女性は、恋人に捨てられ孤独な生活を送っており、絵は閉ざされた心と性的な欲望との葛藤を巧みに描いてる(作品解説より)のだそうですが、、、まぁ、お疲れなのは確かでしょう。

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「ヴェラスケス回想」。その名のとおり、宮廷画家ヴェラスケスの絵を彷彿とさせます。
王女マルガリータ(随分前に西洋美術館で見ました)のような絵ですね。
他に子どもを描いた絵としては、「旦那様への手紙」というのが、たいへん素敵でした。手紙を渡す子どもの目がとてもキラキラと輝いているのです。その輝きは喜びとか嬉しいとか言うのでなくて、キッパリとした意志のようなものです。

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ちょっと興味深い絵が二つ、
「信じて欲しい」(Trust me)と「名残のバラ」(The last rose of summer)ですね。

「信じて欲しい」の方は、恋人からの手紙らしきものを夫に見つかり、「その手紙見せなさい」「なんでもないわ、私を信じて」などという会話をしてるかのようです。が、、、「信じて」と言われても無理な状況の気がしますね。。。もうあまり若くはない夫婦のちょっとリアルなシチュエーションです。
この絵ではわかりにくいですけど、二人の目は鋭く相手を見つめています。

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「名残のバラ」の方は、さすが英国ですね。あの歌がちらと脳裏を掠めました。
絵の方は、適当なものが見つからないので、見つかり次第アップします。
娘メアリを描いたこの絵は、生涯独身で両親の元で暮らしたという彼女の生涯を静かに見つめてるかのようです。歌はトーマス・ムーアの詩によるものです。私の愛唱歌の1つですね。。
1番だけ覚えてるので書き出してみました。

'Tis the last rose of summer
Left blooming alone
All her lovely companions
Are faded and gone
No flower of her kindred,
No rosebud is nigh,
To reflect back her blushes,
To give sigh for sigh.

by Thomas Moore


最後に、風景の絵です。
「オフィーリア」で背景の風景を端整に描いたミレイの絵は、まるで植物画家のようでもありますね。
いくつかスコットランドの風景を描いたものがありました。その中で「つゆに濡れたハリエニシダ」は、とても幻想的で、コローの森の絵を思い出させました。ちょっと違いますけどね。。

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頑張って行ってきた甲斐がありました。
素敵な絵に出会えました。