ぺんぎんの音楽日記

クラシック音楽について、絵画や鳥たち、日々の生活について自由に書いていこうと思います。

ベートーベンのピアノソナタ~音楽の新約聖書

今日はちょっと長いですよ・・

5月に、ラフォルジュルネでシューベルトを楽しんできました。
その時に、佐藤立樹さんという若いピアニストの演奏を聴きました。
その記事はこちら↓↓↓↓


音響の悪い環境でのレクチャー付の演奏、立ったまま聞き入った聴衆、演奏家と聴衆と
が距離を置かずに音楽を通して一体となった、素晴らしいひとときと感じたのでした。
その後、佐藤さんの演奏会があると知り、でかけることにしました。
そして、今日がその演奏会でした。
実は朝から仕事の日、朝だけお仕事に出かけ、昼からはお休みを頂きました。(*^^*)た
まにはいいよね。
朝からとてもよいお天気で、暖かかったし、気分よく出かけました。

目指すは有楽町です。ピアノのコンサートといえばたいていのホールで使用されるスタ
インウェイ、その代理店に付属するホールです。
有楽町と日比谷の間、ラ・フォル・ジュルネで通った東京国際フォーラムを横目に見な
がら、こないだ行った日比谷公会堂方向目指して歩きます。
日比谷公園の手前にあるビルの地下にホールはありました。
おそらくは100人も入らない小さなホール、サロンコンサート向きですね。もちろん
、ぴかぴかのスタインウェイが置いてあります。
美しい楽器を見ると惚れ惚れします。なので楽器屋をのぞくのが好きです。
ホールは木が使ってあり、大変音響がよいです。

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さて、佐藤さんが入ってこられました。
小さめのホールですので、とても距離が近い感じです。この距離の近さ、5月のラ・フォ
ル・ジュルネの演奏を思い出しました。ベートベンの素晴らしい音楽のひと時をともに
過ごしましょうと、そう誘われてるような気がしました。

今日のプログラムはベートーベンのピアノソナタです。

第1番ヘ短調作品2-1
第14番嬰ハ短調27-2「月光」
第21番ハ長調作品53「ワルトシュタイン」

今日のコンサートはレクチャーコンサートの第5回ということです。
つまり、曲の解説が入るのです。演奏に集中しなければならない演奏家にとってレクチ
ャーをしながらのコンサートってどうなんでしょう、しんどいのではないかと思いまし
た。
まず、立ったまま丁寧にご挨拶され、そのあとマイクを持って、座ってお話をされまし
た。
今日のコンサートのタイトルは「ベートーヴェンピアノソナタ~音楽の新約聖書」で
す。新約聖書キリスト教会では、旧約聖書と並ぶ重要な経典です。ベートヴェンのピ
アノソナタはピアニストにとって大変重要なレパートリーということなのですね。
それに対して、旧約聖書はバッハの平均律クラヴィア曲集、なのだそうです。これも、
ピアニストにとって基本の基本、というところなのでしょうか。

(注:旧約聖書はキリスト以前のユダヤの経典であるのに対し、新約聖書はキリストや
その弟子の活動を記したもので、律法主義を批判し信仰によってのみ救われるとした経
典です。)

佐藤さんのお話によりますと、、ベートヴェンのピアノソナタは、伝統的な枠組みから
自由で多様、内面や精神を追求表現したものである、ということなのですね。
また、当時改良されてきたピアノで、オーケストラ風の響きを、ピアノ演奏のテクニッ
クを追求しているのだそうです。
それまでの2~3楽章で構成されたピアノソナタと異なり、ベートーヴェンは3~4楽
章で構成される規模の大きいピアノソナタ交響曲を意識して書いています。
交響曲を書く練習をピアノソナタでしていたのでしょうか、、

ベートーベンは、交響曲を書き上げるのも大変慎重で1番が作曲されたのは彼が30歳
の時であったということは、ベートーベンの交響曲シリーズでも書きました。
ピアノソナタも初めて書いたのは24才のとき、ハイドン(初めて書いたソナタはソナ
タの前身?)やモーツァルトシューベルトに比べると随分遅いですね。
その第1番のピアノソナタは、当時師であったハイドンにささげられています。
佐藤さんによると、今では、これを聞いても特にどうってことはないのですが、当時は
大変センセーショナルだったようです。大変情熱的で激しいものがあるのですね、それ
までのピアノソナタと比べて。
べートーベンが生まれたあとに、1879年にフランス革命が起こっています。
アンシャンレジーム(旧制度)を壊したフランス革命が文芸におよぼした影響、1つには
それまでの古典主義から自由なロマン主義への移行を促進したことでしょう。ベートー
ベンは、まさにその旗手だったということでしょうか。

さぁ、ピアノソナタ第1番の演奏です。
佐藤さんは、ピアノに向いて座りなおすと、胸ポケットから白いハンカチを出して、ピ
アノの鍵盤を丁寧に拭きます。あら、意外と神経質?、、と思いましたが、そういうこ
とではなくて、多分、レクチャー講師からピアニストへの気持の切り替えをしていたの
かな、と思いました。演奏への気持の集中、ですね。
1番のソナタは、実は(少なくとも演奏会では)初めて聞きました。
ソナタ交響曲の<1番>にこだわっただけあって、準備されてから作曲されただけあっ
て、1番という番号にしては完成度の高いものですね。確かに激しいもの、情熱的なもの
も感じます。

続く14番のソナタ「月光」、「幻想曲風ソナタ」と言う別名があるのだそうです。確か
に幻想的なはじまりです。ソナタを別々の楽章の集まりではなく、一体感のある作品と
して捉えているのだそうです。ソナタの重心が終楽章に置かれて、楽章ごとにテンポが
斬新なのだそうです。
急-緩-急の伝統的な楽章のテンポではありませんね。
ゆったりとした幻想的な1楽章に「月光」の名称が付いたのでしょうけれど、これは、ベ
ートベン自身によってつけられたものではないということです。昔、英語の教科書か何
かに載っていたベートーベンが月夜に盲目の少女に送ったという「Moonlight sonata」
の逸話も、おそらくはウソなのでしょうね、、
佐藤さんの演奏はとても丁寧です、が、1楽章ではごめんなさい、前日夜遅く帰宅し今朝
早く仕事に出た私は、ちょっと眠気に襲われてしまいました。心地よい眠気です。
目を閉じてるとピアノの澄み切った音色が、頭の中に響いています。
さすがにピアノの音色がきれいです。この前の時とはピアノも音響も違いますから、、
p(ピアノ)のそっと撫でるようなタッチの音、f(フォルテ)の力強い音のどちらも
たいへん澄んだ音です、素直な音です。ピアニストの人柄も表れているのでしょうか。
素晴らしい情熱的な3楽章のあと、休憩です。

最後の曲、第21番「ワルトシュタイン」です。
実は、長らくワレンシュタインとワルトシュタインを混同してました。
ワレンシュタインは30年戦争で神聖ローマ皇帝軍としてあのスェーデン王のグスタフ・
アドルフを戦死させた軍人です。ワレンシュタインは元々はワルトシュタインというこ
となので、このソナタを奉げられたワルトシュタイン伯爵とは、無縁ではないかもしれ
ませんが。
1楽章の最初の和音の連打は軍馬の走る音で、高音のピラ~タララッっていうのはラッパの
音かと。。。勘違いもはなはだしいですね。
ワルトシュタイン伯爵はベートーベンの後援者で、ハイドンに紹介したり、最新式のピ
アノを贈るなどベートーベンに様々な援助をしてきた人です。ベートーベンは伯爵への
感謝の気持でこの曲を献呈しています。

佐藤さんによると、この曲の特徴は大規模な2楽章形式であり、高度な演奏技術を駆使、
ペダルの効果を用いてるのだそうです。2楽章しかないのに(Introduzioneを2楽章と考
えて3楽章とする場合もある)なんと24分の演奏時間なんですね。楽譜を見てもかなり長
いものであることがわかります。
背景には最新式のピアノ、エラールを送られたということがあったようです。
また、作曲された時期は、1802年のハイリゲンシュタットの遺書の後の1804年、中期の
代表的な作品がどんどん生み出されていた頃ですね。(交響曲シリーズ第2番参照。)

力強くてスケール感のある素敵な演奏でした。
これは、大変難しい曲ですよね。
佐藤さんは、ベートーベンに「いじめないでよ」と言いたくなるという様なことをおっ
しゃてましたが、わかる気がします。
ベートーベンは、あまり素直な性格とは思えません。
ベートーベンの「演奏者いじめ」は、あると思います。ミサソレムニスを歌った時にと
ってもそう思いました。(笑)

最後に「悲愴」の2楽章が演奏されました。プログラムには載っていない曲です。
激しいワルトシュタインのあとに、よく知られた穏やかなメロディが流れました。
ピアノ(p)の音色がきれいです。とても気持が落ち着きます。


サインがいただけるというので、CDを買っちゃいました。
今日の演奏プログラムか、先日聞いたシューベルトだとよいなと思ったのですが、
ショパンスケルツォでした。佐藤さんのショパンも聞いてみたいと思います。

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ついでにお写真も撮らせて頂きました。み~は~ですみません。
許可を頂きましたので、アップさせて頂きます。

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