ぺんぎんの音楽日記

クラシック音楽について、絵画や鳥たち、日々の生活について自由に書いていこうと思います。

LFJ~ピアノ編

今回のコンサート、昨年のように日時順に日記のようにレポートを書こうかと思ったのです
が、テーマを決めてまとめてみる事にしました。その方が自分にも分かりやすいと思うので
す。


まず、ピアノの演奏から、

★イド・バルシャイ

ピアノの演奏は、本当はバッハの時代ではチェンバロとかオルガンの演奏だったりしたはず
のものです。それをピアノで弾きこなしたり、ピアノ用に編曲して演奏しています。
まず最初に聞いたのは、クープランクラヴサン(チェンバロですが、フランスではこう呼
ばれますね)の組曲(オルドル)です。
バロック時代の組曲は序曲で始まり、6―7曲の舞曲(アルマンドクーラント(コレンテ
)ガヴォット、サラバンド、ブーレ、メヌエットジーグなど)で構成されます。
クープラン(大クープランの方ね)はチェンバロの曲をたくさん作った人ですが、オルガンの
曲もあります。昔いくつか練習して弾きました。が、チェンバロ曲は弾いたことがありませ
ん、ころころっとした可愛らしいトリルとか、どんな風にピアノで表現するのか興味があり
ました。
会場は、G409、ガラス棟の4階です。元々会議室ですね、150席ほどの椅子がスタインウ
ェイのピアノの周りに並べられています。サロンコンサートの規模ですから、ホールで聞く
よりもずっと近い距離で聞けます。
席はピアニストの真後ろ、1列目の3番です。
係員が横に細長い楽譜をピアノの上においていく、椅子の上にはなにやら布が敷いてある。
そこまでで、何だか神経質そうな印象があります。
まだ、若いピアニスト、イド・バルシャイ、入ってくるなり聴衆をさっと見回します。
演奏を始めるとチェンバロのような音を出そうとしてるのか、トリルがころころっときれい
に響く。ペダルは踏み過ぎない程度に軽く踏んでいる様子。ピアノの音をチェンバロ風にし
ているかのようです。細かいところまで丁寧ですが、単調といえば単調かもしれません。
メロディはきれいに歌っています。本人も歌っているようです。唸り声のようなものが聞こ
えます。
確かにうまいし、ピアノ(弱い)の音もきれいです。でも、なんか物足りない。もっと訴える
ものがあってもいいのでは、と思ったり。
ピアニストに期待していただけにちょっとがっかりです。フランスの曲ってあまり激しくな
らずに淡々としてるのかもしれないとは思うけれど、、、ね。


★児玉麻里

すらっと長身の児玉さんの演奏は、バッハのオルガン曲(ブゾーニ編曲など)、ラモー、クー
プランの作品です。やはり会場はG409,前と同じです。席も前より2つずれていますが、ピ
アニストの真後ろです。
黒に襟やウェスト、裾に銀の模様の縁取りのある素敵なドレスです。
彼女は暗譜です。最初にバッハの「トッカータニ長調」です。演奏前にお知らせが掲示板に
あり、演奏順序の変わったことが書いてありました。
バッハ:コラール前奏曲2曲⇒バッハ:トッカータ⇒ラモーのクラヴサン曲⇒クープラン
クラヴサン曲⇒バッハ:半音階的幻想曲とフーガ の順から、
バッハ;トッカータ⇒ラモー⇒クープラン⇒コラール前奏曲⇒半音階的幻想曲とフーガの順
に変わったのです。
私的にはこの方がよい気がしました。
最初のトッカータは、シャープな音で始まり、ピアノのダイナミズムを生かして自由に演奏
してると言う印象でした。強い音ばかりでなく、むしろ弱い音の方がきれいに響いていまし
た。ラモー、クープランの曲も彼女の感性でチェンバロの曲だということを忘れるほどにピ
アノを生かした演奏で、ダイナミックだったり、可愛らしかったり、リズミカルで弾けてい
ました。
そして、私が1番聞きたかったオルガン曲からの編曲であるコラール前奏曲2曲です。オル
ガンで弾いた曲ですが、これらをどのようにピアノで弾くのか大変興味がありました。
「いざ来たれ異邦人の主よ」では、はじめの重々しい音が、まるでオルガンの低音のようで
した。力強く、しっかりとした演奏で、重々しさはオルガンに引けをとらないのでびっくり
でした。
次の「喜べ、愛するキリスト者よ」も、コラールのメロディが生き生きと出ていました。
実は、オルガンではこのコラールのメロディをペダルで弾いて、高音のメロディを右手で弾
いて、低音伴奏を左手で弾くんですね。
でも、ピアノは2手しかありませんから、このメロディのところをあるときは右手であると
きは左手で弾くのですが、ちゃんと1つの歌ってるメロディとして聞こえてくるからすごい
です。見てるとかなりアクロバティックに弾いてたりするのに、です。
最後の半音階的幻想曲とフーガは素晴らしかったですね。
彼女はオルガンやチェンバロの曲を、ピアノ曲として自由に自分のやり方で弾きこなしてい
ました。

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コラール前奏曲「喜べ、愛するキリスト者よ」のオルガン楽譜です。
上2段がマニュアル、3段目がペダルですね。ペダルのところがコラールになっていますね。


アンドレイ・コロベイニコフ

私の聞いたピアノソロコンサートは、すべてG409でした。しかも最前列、、2回は真後ろで
したが、今回は顔がよく見える位置です。手はちょっと見えないですが。
去年、シューベルトソナタを聞いて感銘を受けたピアニストです。バッハのパルティー
5番と6番を聞きます。
タキシードを着て入ってきたのでびっくり。。去年はラフなシャツ姿でした。去年は気難し
い顔でしたが、今年はとてもにこやかで愛想がよいです。去年よりちょっと大人になったの
かな、なんたってまだ若いもの。。23だっけ?
丁寧にお辞儀をしてはじめました。はじめから、その顔つきでピアノの世界に浸りきってる
のが分かりました。彼も息遣いのような歌うような声を発しています。表情が手に取るよう
に見えます。
そして気づいたのですが、すべての音に彼の魂が吹き込まれているのですね。すごい集中力
ですが、集中してるというより、ピアノと一体になっているという感じです。一つ一つの音
に情熱がこもっていて、弾(はじ)けそうなのを一生懸命にこらえてるようでもあります。
情熱的なバッハです、ほとばしる情熱を抑えて最後まで理性を保っての演奏、ですね。
時折、夢中になって声に出して歌ってるところもあり、神がかり的でもあります。
けれども、内股気味に踏むペダルは決して踏みすぎず、曲も最初から最後までよ~く知り抜
いて自分の音楽を作り上げていっています。
素晴らしい演奏です、聞きほれました。いつもはシフの演奏でこのパルティータは聞くので
すが、シフの淡々とした演奏にはない熱い演奏を聞かせてくれます。
情熱的でも音に乱れはなく、強い音も弱い音も大変きれいです。ノンlegatoでコロコロ転が
る音は粒が揃っていますし。
ただ、こんなにものめりこんで弾いて、大丈夫なのだろうかと思いましたね。
プッツン切れてしまいそうです。。
演奏が終ると、拍手喝さいです。
ピアニストはにこやかに何度も丁寧に会釈をして、2度戻ってきて会釈をして、最後はもう
時間がないというそぶりをしました。45分のはずが、1時間を少し越す演奏でした。


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G409のホールの前に演奏者達のサインがありました。
左真ん中へんが、イド・バルシャイです。
右下のロシア文字のサインがコロベイニコフです。
今年はサインはいただけませんでしたので、これでガマンです。